
左袖内袖部分が大きく破れています。

ムートンは破れやすい革で、補修のご依頼の多いトラブルです。
破れている箇所だけと思いがちですが、ムートンは経年で皮革に傷みが出やすく、破れ周辺に皮革の傷みが多数あります。
吟面のクラック(赤丸箇所、負荷を与えると破れます)

革テープ縫製部分に隠れた破れ。
縫製ラインに沿って皮革が破れています。

破れてしまっている部分は、補強芯で補強しジグザグステッチにてつなぎ止め、ムートン皮革の弱っている部分を広めにあて革にてカバーします。
※破れた部分だけをカバーすると、あて革がいびつな形になってしまうので、デザイン的に違和感が無い形になるようにあて革の範囲を決めます。
今回は脇下から袖先までほぼカバーする形になります。
当方であて革に使用する皮革(馬革)の茶系の色目は3色となります(他の色目はご用意出来ません)
今回のB-6に茶系3色のカットサンプルを置いた画像です。

上からブラウン、チョコ(シールブラウンに近い色目)、ダークブラウンとなります。
※画像では光の加減等で正確な色目が表現できておりません。ご了承ください。
今回はお客様のご希望で革テープの色目に近いブラウンの皮革を使用してあて革を施します。
D1やB3、B6は、本体のシールブラウンとは違うブラウン系の革を補強革として縫い付けたジャケットが多数あります(大戦モデルなど)。
シールブラウンの同系色の革ではなくラセットブラウン系のあて革を使用するのもお勧めです。
B-6やB-3の破れ補修は、破れた箇所の反対側にもダミーのあて革を施して左右対称に仕立てることが多いです。
今回は右袖にもダミーのあて革を施して左右対称に仕立てます。
革テープに隠れている皮革破れはチョコ(シールブラウン)の革をあてて補強します。
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アウトシームの革テープ縫製とインシームの縫製を一旦解体。
破れ箇所周辺を圧着芯で補強し、ジグザグステッチで縫製しつなぎ留めます。
破れ箇所を広めにカバーできる大きさの皮革を切り出し。

上:あて革を仮止めして縫製。
下:アウトシームの革テープにかかる部分は革テープに巻き込んで表から見える針穴を拾いながら縫製。

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リペア完了。
ジャケット前後

左右袖あて革
アウトシーム側は革テープに巻き込み、インシーム側はインシームに巻き込んであて革を縫製しています。

左袖破れ補修比較
左:リペア前、右:破れリペア完了

今回のリペア、税別 46,500円(税込 51,150円) です。
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